「君は、この世界を美しいと思うかい?君の目には何が見える?」 |
昔、ある錬金術師が私に尋ねた言葉だ。 母を殺された。私は生かされた。目の前であっけなくいなくなって閉まった彼女を探すことはできない。とっさにそう思ってしまった。あの頃、母は私を育てるために裏の世界に片足を突っ込んでいた。母はいつも言っていた。 「This is your story.No one help you.」 (これはあなたのおはなし。だれもたすけてくれない。) だから世界は不公平も何もない。だれにも平等にチャンスはあって生きて死ぬプロセスは誰だって同じ。場所とか環境は違っても生まれることと死ぬことは変わらない。選択肢が本当に少ない時と多くて選ぶことのできない差がとても多いだけ。 |
「あなたは、この世界を美しいと思いますか?」 |
彼は目を大きく開いてこっちを見た。変わったことなんかほとんどない。あるとしたら、私は大きくなって彼の近くにいて彼はほんの少し歳をとったことだ。それが何よりの真実。でも彼は今不必要なほどに怯えているのがわかる。彼の手にあの母を殺した手袋はない。私が今は持っているから。 |
「君が今、私に殺意を抱いているのなら私は君を殺すだけだ。」 「あなたはこのせかいがうつくしいものだとおもいますか?」 「いや、美しくもなんともないな。」 「何で、私に聞いたの?あなたは!」 |
彼の手が軍服の中を走る。私の手を、肩を、押さえつける。大声で叫ぼうと思っても、喉のあたりを押さえつけられた。何もかもが私の何もかもを押さえつけて私は深い沼から這い上がることすらできなくなった。彼はそうして望んだ物を手に入れて耳元でゆっくりと言った。あの時と同じように自分の体に私を押し付けて。 |
「This is your story.No one help you.」 |