昔からそうだ。何かあった時は決まって三日間は眠れない。何を食べても飲んでも三日間は吐き続ける。四日目、私はとうとう衰弱の一歩手前まで来て一日を点滴で終える。まだこれは運がいいほうで、場合によっては入院することもある。これが私の何かあった時の一週間のお決まりパターン。
彼は私のどうしようもならないくらい闇の底に浸った日に必ず来る。本当にどうしようもないくらい深いからとどまることを知らない。だから私は闇に蝕まれる、侵されていく、囚われる。「どうしたの、。元気がないね。」って、なんてバカな子。そういうことは聞くなってお母さんに教えてもらわなかったの?


「どいて。」


彼は手を伸ばして「どうぞ」と言う。その紳士のような態度は誰に教えてもらったの。ついさっき食べたものを一通り吐き出した。トイレを出た。彼は腕を組んで突っ立っていてこっちを笑って見ている。

「また?馬鹿な生き物だね。人間ってさ。」

「あなたってかわいそうな生物ね。」

「あんた、女だからってさ言って良い事と悪い事あるよ?」


彼は私の頭を壁に叩きつけた。頭を壁に押し付けられる。ものすごい音がして私の頭の中は考えようとしてもそれすらできなかった。こういう時はどうするんだっけ。ああ思い出せない。睨んだら彼は耳元でささやく。

「入院なんか飽きただろ?」

「別に。」

「あんたの良いとこはさ、媚びないとこだよ。」

手を私の頭からどけたため彼を正面から見る事ができるようになった。頭がガンガンする。本当にやばい。底から何かがこみあげる。

「悪いとこはやっぱり媚びないとこだよ。」

「あなたにそんなもの売ってどうなるの。」

「俺も男とかいう生き物だからそういうのも欲しいわけだよ。」

彼は私に近寄って「痛かっただろ」と私の頭を撫でた。まだガンガンしている。気持ちが悪い。そんな偽善の名で固めたものいらないんだけど。また何かが戻ってきそうな感覚が絶え間なく押し寄せる。「ねぇ、ちょうだいよ。」と彼は私を抱きしめて背中に手をまわす。「ねぇ。」とささやく。


「俺はあんたにたくさんあげてるじゃん。不公平だよ?」


あなたが少年のかたちをした何かなら。