人魚姫は最後は泡になって消えてしまった。
そう、この世界に永遠なんてない。
「君は人魚になれたかな。」
もしもなれたら、あまり泳ぎの上手くない僕に泳ぎ方を教えて欲しい。
君のいるところまで泳いでいけるようになるから。
不思議なほどに静かな日だったと思う。病院の一室に一人で眠っている少女がいる。どうして君がこんな場所で眠っているんだろう。急いで、側に行ったけどそれはもう既に手遅れ以外の何者でもなかった。僕が静かにキスをすれば、何かのお話のお姫様のように目を開けてくれたらいいのに。 一ヶ月前眠っている少女の額にキスをした。僕は目の前が真っ暗になった。 「驚いた?」 「・・・!」 静かにもう一度キスをするその姿に僕は明日を描いた。二人でシーツに包まって鍵を閉めて眠る行為が永遠になればいい。の身体に落ちると、腕の点滴の管が見えた。彼女は毎回毎回、自分の腕から引っこ抜く。 「そんなことしたらダメだよ。」 「アルも私を怒るのね。」 「怒ってないよ。誰かに怒られたの?それとも、怒られるようなことしたの?」 しばらく黙り込んで、はもう一度キスをした。 (今思えばその沈黙の理由は簡単で君が遺したものの中から大量に出てきたよ。) 「両方。」 「謝らなくちゃだめだよ。」 (そうなんだ、僕にもう一度謝りに来ようとか思わないのかな、君は。)身体を落として、ベットのスプリングのきしむ音を聞きながら深く深く落ちていく。僕の名前を呼ばれる、それだけで僕はどこかに落ちれるような気がする。キスをしてもう一度だけ落ちていく。 「どうして、そんなに慌てるの?」 「慌ててないよ。怒ってもないし。」 「アルフォンス、私のこと好きでいてね。私もずっと好きでいるから。」 深く深く落ちてから、僕はの腕に点滴の針を刺した。白衣に無数の赤い点を遺して。こんなこともできるようになったんだよ。泣き虫の僕しか覚えてないだろうけどさ。もう僕は昔の僕じゃないよ。人を助けてあげられる手を持ったんだ!(そう、でももう僕はこのとき君の終りの日が近い事を浅く薄く知っていた気がするんだ。) |
(050310)