嶺の花




愛するはずが憎んで、愛しいのに蔑んで。
消えていく。

「私に言った言葉は嘘だった。」

「そんなことないよ。」

「覚えてるの?違うでしょ。間違えないでよ。」

愛しいのに蔑んで、手をたたき付けた。
ものすごい音がした。
彼女は無表情にその行動を見つめた。

「誤ることもしないんだね。」

「私が悪い?」

「さぁ、でも不快なのは確かだよ。」

「誤ればいい?いなくなったらいい?」

「勘違いしてる。」

それは自分だと知っている。
いつから愛情はゲームになったんだろう。
戦って戦って、回復アイテム探していつかたどり着くはずのゴール。
マンネリなシナリオ。
勇者になるか否か。

「ごめんなさい。」

「別に。」

そうして突き放す。

「仕事大変なこともよく知ってるけど、」

「解りきった様なこと言うなよ。」

「つらいならやめればいいの。なにもかも。楽になるから。きっと。」

「できたらどれだけいいか。」

「またね。」

キスをした。
どれだけ求めても求めても何もない。
涙が落ちていった。
結局残ったのは空しい空腹感とつぶされそうな罪悪感だった。
またなんかあるはずがない。
つりあうはずが無かった。
あまりに彼女は自分とはかけ離れていた。
彼女は高嶺の花だった。