C U T (YOU CUT ME EASY.)
どんな忠誠も夢も愛も全てを切りつける人なのだと知ったから。 それ以外の理由は何も要らない。 いつも思っていたことだ。 こんな日がいつか来るはずだと。 知ってたでしょう。私、あなた。 それがもしも全てを失くしてしまうことになっても私なのだと。 それだけは言わなくてはいけないと。 「私は、あなたのことが好きになれなかった。」 「それで何がお望み?」 「できるだけ会いたくない。」 "できるだけ"なんかじゃない。 会えば会うほど心の底の気持ちをかき混ぜられる。 マーブル模様が一つの色になっていくようだ、とすら思う。 けれどそんな気持ちの良い痛さではなくて傷口を開かれた。 パックリと。血があふれるどころか肉も骨も見える痛みの傷。 とてもよく似ている。良く言ってみたいけどやっぱりウソだ。 「好きになろうと思って、頑張ったのに。頑張ったら何もかも嫌いになった。」 「何もかもねぇ。どないしようね。ああ。」 ギイッと椅子の音がした。顔をあげたくても怖くてあげられない。 グイッと顔をあげてそのままキスするのに黙って付き合うしかできなかった。 嫌になって突き放したけれど、それは何の防御にもならなかった。 「、なんかあったん?」 「"今は好きじゃなくていい。いつか好きになって"そう言った。」 「ああ。言ったね。そないなこと。」 「いつかも私にはまったく見えないんだから意味が無いことだし。」 「へぇ。」 突き放したら意外と距離がおけた。そのまま私は、外に飛び出した。 まったく開いてない距離に苛立ちを感じた。 切り捨てるのも、執着するのも同じぐらい汚いことだと私は知った。 あの男を好きになれないなんて私は初めからずっとわかりきっていた。 |