背中を見てももう、痛いなんて思わないから。背中を見てももう、抱きしめたいなんて欲望に溺れないから。
私はきっと溺れない。
「もう、時効だと思うの。」
「何が?」
「ウソをつくのが。」
大きな手を見ても、触って欲しいと思わないから。大きな手を見ても、触りたいとも思わないから。お願いだから。
「僕は、嘘なんかついたことはないつもりだけど。」
「それもきっと嘘。それが嘘。どうしたってあなたは嘘つき。」
お願いだからもう一度でいいから。本当のことを言って欲しい。何があってもいい。それにも嘘をつくなら私はきっと泣くから。
困るか困らないかはよくわからなくて、目を見ても私は震えている。
どうして、こんな衝動に駆られなくてはいけないの。
「嘘は2種類あるんだ。」
あなたの口で私の口を塞がれた。正直者の嘘ほど精密にそして壊れにくいものって、ないものよ。
一つ目の嘘が私に安息を誘う嘘なら、二つ目の嘘はどこまでも残酷な嘘だわ!
離れて、もう一回塞ごうとしたあなたの口に私は手をあてた。
「嘘なんて、どこまでも嘘なの。」
シ ー ツ の 海 に 私 を 落 と さ な い で
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