「私、結婚するの。」



私はその言葉を一生忘れないだろう。彼女の嬉しそうな顔を。どうしてこうなったんだろう。そういえば私はたったの一度でも胸の中を誰かに切り開いて見せたことがあっただろうか。

「おめでとう。幸せになれるよ。」

「そう思う?」

「絶対なれるから、大丈夫。」

私は式に呼ばれて一番後ろで見ていた。私の方が先に海燕を好きだったのに。ただ学校に行ってただバカなことをしていたときから。そう思えば思うほど遠くに行きたくなった。誰かからも二人からも全てからも。大勢の人の中にいても私だけ取り残されているのがよくわかった。
表面上は大丈夫でももっと奥はダメだ。浮竹隊長は笑っていた。私も少し笑った。張り裂けそうだった。誰かに何かを切り開いて見せるのと張り裂けて見える事の違いが大きすぎる。
それからしばらくして朽木家の養子の女の子が何時でも海燕にくっついているのが見えた。それからもうしばらくして彼の妻、私の友達または十一番隊三席が虚によって殺された。私は目の前の光景に震えた。私の気持ちに返事をしたような現実に涙が出てきた。

「これから虚を殺しに行くんだ。」

「ごめん!海燕・・・ごめんなさい!」

髪の毛をグシャグシャにされた。どうしようもなく好きだ。なのにこの想いが伝わることはきっと永遠にない。いきなりわけもわからなく謝られた海燕は私を変に思ったに違いない。

「謝るのは俺だ。」

私は彼の前で泣いてしまった。絶対に泣くもんかと思っていたのに。涙が止まらなかった。

「待ってるから。」

「絶対帰って来てやるよ。」

人を嘘つきにする天才らしい私は今となったらもう誰とも、誰かとも




手と手を合わせる事さえもできない



(050716)