焦げてく。焼けすぎて真っ黒になる。充満する匂いと煙が私を取り巻いている。助けて欲しいなんて思わない。元に戻る事なんかできないんだから助けなんて想像の生み出してしまった幻なんだから。

「ようこそ、お姫様。よく地の底から這い上がってきたね。ここは君が一年前に亡くなった場所だよ。」

 目の前で笑う男に「」と女の名前を呼ばれて私の名前が「」であることと女であることを頭の奥で確認した。私は裸でしかも血まみれで立っており、周囲を見渡すと血を流して動かなくなってしまった人がたくさんいた。どうやら男の言葉は本当で私は一度いなくなった人間らしい。その証拠に、男のどこか冷たい表情とは対照的に身体は温かで肌に触れた唇もおかしな程リアルだった。

「・・・ねぇ、あなたは私の大切な人なの?」

 男は私を抱きしめていた腕の力を少し緩めてもう一度だけしっかりと抱き直した。その様子で私はこの男の側にいるべきではないと判断した。きっとこの男は今は嘘をつく。

「君と僕は愛し合っていてね、でもある日突然君は僕をこんな世界に残して逝ってしまった。」

 さっきまでの不安を抱きながらもひどく悲しそうな目をする男に私の心と身体は簡単に捕われてしまった。私を一度腕から離して私の肩に男は優しく手を置いた。

「でももう一人じゃない。君がいてくれる。」

「私は何も覚えてないのにあなたは私を・・・」

「愛してるんだ。記憶なら僕が持っている。」

 男の目は喜々として光っていた。この男が私を大切に思うあまりにしてしまった行動なら私はこの男を本当に愛してたのかもしれない。猜疑心。その時、私の目の奥がパッと光り一瞬真っ白になった脳裏によぎる糸を捜し辿って出会った記憶にストンと力が抜けて血だらけの地面に座って耳を塞いだ。だってこの男は 私 を 殺 し た 張 本 人 の は ず な の に !




かわいそうなんて想わない



(050807)