夏の雨が嫌い。激しく降るくせにスグに止むそんな雨が大嫌い。空から落ちる水は幾千幾万と私に冷たさと厳しさを思い知らせていく。すぐ調子に乗ってしまう私への抑制装置かもしれない。
強い雨に叩付けられる石はけして負けないし割れないし揺るがない。私もそれだけ強かったらと思う。
ガラスにぶつかる雨で外が見えない。外と部屋の中にある一枚のガラスがモザイクをかけて、ただ甘いだけの世界が広がっていく。フェイク。骨でがっしりした手がそれでも細くて綺麗でそれに触るとドキドキする。血の流れている管。口唇をゆっくり指でなぞる事が許されて黒い髪を愛しく思った。どうか時よ止まって。雨の音も廊下を歩く人の足跡も全て消えてしまえばいい。世界が今だけは二人っきりになればいい。

「もっと早くに会えればよかった。」

「・・・それでも変わらなかったと思います。」

ほら雨が止んだ。阿散井副隊長はきっとすぐ戻ってくる。雨の匂いがする。"愛しい"とも"愛してる"とも言葉に出来ないほど私は...

「きっと変わらなかった。」

「そうか。」

私が部屋をあとにすると阿散井副隊長が帰ってきた。きっと変わらなかったと思うのは嘘。濃い雨の匂いが私を消してくれればいい。ひたすら思った。

燃ゆる恋が終わる瞬間を



(050910)