「あなたはあたし、あたしはあなた。」 同情したような目で私達はお互いに見つめあっている。それに、私のどんな思いがあるかも知らずにただ「ああ。」と。喪失したものの価値は自分でしか量れない。探しものは、ここにはもうない。腕を押さえつけて私は上からその人を眺めた。男女の位置がおかしくなってる。 「、」 「誰かを呼んでもいいよ。」 ゆっくりと手首から掌に手を伸ばす。ずっと長い間、待っていたかのように手をつないだ。しっかりと離さない様に。細く長い指が私の5本の指に絡まる。恍惚とするほど甘い。視界が一転する。打ちつけられた痛さが消えるほど。 「悪くはないな。」 溢れたら止まらない。漆黒の夜のような髪が私にあたった。黒のコントラストに飲み込まれていく。キスをする。 「私は狂ったのだろうな。」 ようやく片手が自由になった。その人を思いきり私の胸に沈めた。抱きしめた。 「でもね、あたしの方が可哀想だった。あなたはあたし。だからこんなにも愛しい。」 |
(060221)