死神の仕事って簡単そうでそうじゃない。虚は律儀に年中無休で24時間きっちりお勤めをしてくれる。死神だって人間関係はある、嫌な上司は腐るほどいる。そういえば、吉良君泣きついてきた。あたしも今は誰かに泣きつきたい。カチ、カチ...と、ボールペンをひたすら一定のリズムでノックする。藍染隊長と話している時と話し終わった後の余韻に浸る様な雛森ちゃんの恍惚としたあの目。なんだか叶わない恋の様で見ているこっちが痛い。吉良君のそれを見る羨ましそうな(そんな簡単な言葉で片付ける感情じゃない)あの目。どうして、平坦な日常に狂気は潜んでるんだろう。いつだって些細なきっかけで正気は狂気と紙一重になる。早く帰りたい。
「ちゃん、これお願いしてもいい?急いで帰らなくちゃいけなくて。」
「いいよー。あー、でも、急いでどこ行くのー?デートとか?」
「嫌だなぁ、ちゃん。違うよ。」
そうやって笑いあって別れを告げたのはいいけれど一向にやる気が出ない。しばらくすると、一人、また一人と人がいなくなっていく。そして最後は私。ようやくやる気が出た。あっけなく終わった仕事に少し笑えてくるよ。
「まだ、残っていたのかい?もう遅いから早く帰りなさい。」
「・・・あ、はーい。」
「若いうちにたくさん悩むといいよ。糧になる。」
私は、言葉自体は優しいのにどこかでバカにされた気がした。何を見たのかわからないけど隊長の顔が綻ぶ。
「若いのにたいした洞察力だ。好きだよ、賢い子は。」
「賢いって褒めたり、未熟だって言ってイライラさせたり大変ですね。」
「大変だよ。言葉は選ばないといけないから。」
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