「とはサヨナラや。」 包みこむ手が優しさだったのか嫌がらせだったのかは今もよくわからないままだ。でも言葉の意味はよくわかった。だから私はグシャグシャになったシーツに視線を落とした。それを許さずにゆっくり驚くほど優しく自分に顔を戻した。 「あかん。僕を見て。もっともっと、僕を見て。」 グシャリと何かがつぶれた音がした。殻が割れて中身が溢れてそれが潰された。痛かった。小さな頃に腕を折ったよりも痛かった。あなたに殴られたよりもずっと痛かった。あなたは独り言の様に何度も同じ意味の言葉を唱える。私は犬を撫でるようにゆっくり優しくあなたを撫でた。 「お願いしても、連れてってくれへんの。絶対、裏切らへん。もしそうなっても僕がを殺すから言うてもダメ。お堅い人やなぁ。あの人。」 あの人が誰かも私は知ってたけど知らないフリをして「なら仕方がないね」と。そう、言った。あなたは悲しそうに笑った。 「僕だけをずっと見てて。」 足音が聞こえた。ゆっくり近くへ。ベットに横になるとスグに眠気が襲ってきた。きっと次に目を開けたらあなたはいない。それでも足音は近づいてくる。 |
(060317)