「やだ・・・!やめてください!」
「どうしよう・・・ねぇ、こっち向き?」

私の行動の前に市丸ギンは私の髪を引っ張った。そうして思いっきり頬を殴った。痛い。どうして私なの?どうして!
腕には刀で斬られたリストカットのような切り傷、身体は痣だらけだった。私の身体が普通の女の子と同じだったのは少しだけ、昔。

「どーしても止めて欲しい?」
「・・・何度言えば、わかるの!!」
「どうしようなぁ、僕は君の事大好きやし・・・ねぇ?」

知らない!信じない!認めない!許さない!
さっきよりももっと強く、頬を殴られた。キスをされた。深く、深く、深く。憎い男の舌が私を支配していく。

「もう嫌。」

唇が離れた瞬間に、聞こえるか聞こえないかの大きさで囁いた。私の声なんてないに等しく、正常な事さえここには一つもない。乾いた肌をはう舌で、乾いた肌が濡れていく。恐怖に立ち竦んでそれすらも私は拒むことができない。私は。

「誰か助けて・・・」

両手で顔を押さえた。涙で手が濡れた。誰か、私を助けて。手を差し出して。それが是でも非でも掴むわ。

「大好きなの、知ってるやろ?」
「知らない・・・!!そんなの・・・!!」

瞬間、ううん。嘘なのかもしれない。狂ったのかもしれない。市丸ギンが悲しそうに笑った。

「殺したいなら、」
「殺したら楽しくないわ。もーっと傷ついて僕を憎んで恨んで。」






もう、憎みすぎて恨みすぎてこの感情が何かすらわからない。




(060913)