「さっさと帰って!!」

私がヒステリックに叫ぶ事すらこの男は面白いだけなんだね。偉そうにヒトの家におしかけて寝やがったよ。この男。何年ぶりだったんだろう。頭を足で踏んでやった。髪の毛の感覚、骨の形、温度。気持ちが悪い。これくらいしかできる事なんかない。

「痛てーよ。バカ。」

ああ。言ってやりたい。ここにあんたはいらないと。年月は人を変える。愛のあり方や考え方も。私は、自分が安全に生きていける方法を選んだだけ。私は悪くない。だって、一度だってこの男が私の側にいて慰めてくれたことがあった?無かったじゃない。

「お前いくつだ?」

「18」

「あの時は確か15か。3年経ったら餓鬼が女になるか。」

腕をつかまれて男は身軽な動作で私の上にいる。深いキス。怖いんだ。この男が。

「俺が嫌いか?」

ハッとした表情をした私がいる。頷いた。これは自分の意思じゃない。死と隣り合わせの恐怖からだ。いつだってそうだった。

「そうか。」

何だろう。表情が曇った。

「俺はお前が好きだぜ。感の鋭い、いい女だ。」

「私、あなたが好きだった。」

男の首に腕をまわしてぎゅっと服を握った。涙がこぼれそうだ。

「けど!今はぁ・・・!」

「黙れ。」

そうして彼はこれでもかと言うほど体を密接にくっついていた。腕、胸、男性特有の外性器、足。ありとあらゆる場所が服の上からでも解るくらい密接だ。手に力が入る。不安で染まると彼は笑った。優しく優しく彼の頭が私の肩の落ちてきた。少しだけ痛みと戦慄が走る。後は彼に骨まで侵食されて飲み込まれるだけだ。

「お前を離すなんていつ俺が言った?」



君は何もかも残らずに持っていくけれど



(200407/別サイト/060215/修正・加筆)