道にただ突っ立ている女の子がいた。
5か6かというぐらいだった。
「お嬢ちゃん、どうしたの?」
かがんで少女の頭をそっとなでた。
「・・・。」
沈黙が続く。
「パパとママを待ってるの?」
「・・・。」
また沈黙。しゃべれないのであろうかと思った。
「うーん。困ったなぁ。」
何かの声がした。
「・・・あっちに行けばお兄ちゃんの望むものがあるよ。」
少女は大きな目をこちらに向けてポツリと。
その声に驚いたのはいうまでもない。
「・・・そうだね。」
確かにあっちには望むものがある。
「・・・。」
また沈黙。話し方を知らないのだろう。
「賢いね。お名前はなんていうの?」
「。」
おお。しゃべったという心の中の声をぐっと閉じ込めた。
その子供の目は今にこぼれるかと思うくらい大きかった。
「そう。ちゃん。じゃあ僕も君にいいことを教えようか。」
「・・・。」
「心の目は痛くなる前に閉ざしなさい。」
「・・・。」
ワケのわからなさそうな表情が子供なのだと思う。
「大きなその目は閉じなくてもいいから。」
「・・・。」
「しっかりあけて見逃さないんだよ。」
いつか大きくなったときにこの子供が思い出してくれさえすればいい。
「じゃあね。ちゃんのお迎えが来た。」
「うん。」
「バイバイ。」
「バイバイ。」
お迎えにきた少年は深く一例して子供を連れて行った。
礼儀の正しい良い子なんだなと思った。
泥ついたものが流された。