「・・・。」
だ れ も い な い 。 ( や っ た ! ! )
「なにやってるの?ちゃん。」
「あ。」
最悪だ。よりによってこの人だとは思いたくもなかった。抱っこされて窓からおろされた。多分年頃の女の子の格好じゃない。
「だってもう一ヶ月だよ!?それなのに退院できないし薬マズイしきついし。」
「だからってそれは・・・」
「見なかったことにしてよ。」
「。」
強く、呼んだから怒ってるのかと思った。布団に引き戻された。布団をかけてくれた姿はお父さんのようだと思う。
「、みんなお前のためなんだから。」
「みんなそう言うよ!!でもよくならないし!!ヤブ医者なんじゃないの!?」
「。」
「どうして先生まで怒るの?」
はぁとため息が聞こえた。大きな大きなため息が聞こえた。
「俺は怒ってるんじゃないだろ。」
「怒ってるよ。看護婦さんもお医者さんも同じ口調で同じこと言うよ。」
「。お前はアカデミーに通ってるような子供じゃないんだ。」
「それは昨日、お医者さんに言われた。」
次から次へと先生は言葉を考えようとしている。大人は頭がよくない。黙ってれば良いのに。必死に何かへの糸口の鍵を探して私を縛りつける。私は今自由への逃亡を計画している。
「先生、私を連れてって。どこでもいいよ。そうしたら私は外に出られるし先生とも一緒にいられるよ。そしたら引き分けで損も得も無いけど、どちらかと言ったら得でしょ。」
そうするとまた彼は大きなため息をつく。大きな大きな。
「ねぇ、そしたら先生だって病院に来なくてもいいよ。先生、連れてって。」
「賢いようで賢くないよ。ちゃん」
少女の自由への逃亡計画は独りの大人のせいで脆くも崩れ去っていった。
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