「お願い。行かないで。」


「心配ない。俺は戻ってくる。」


そう言ってすり落ちていく手。なぜかはわからないけど行かせてはいけない。サイレンがなっている。眼鏡の青年を睨む。そうすると見下したように笑われた。最低。そうして数時間後、眼鏡の青年は私達に牢から出るように言った。誰もが足早だった。彼の後ろにあるものの気が変わって一生をここで終わることになってもおかしくないからだ。最後、後ろを振り向くとあまりの広さに寒気がした。そう。だったらこの現実の理解は簡単。目の前に彼がいた。眼鏡の青年は頭を下げている。顔は包帯だらけだった。彼の声がするのに彼だと感じない。それでも聞こえる声に寄り添って行った。そうすることが真実を確かめること。でもいくら話を聞いていても希望は見出さずに絶望に変わっていった。廊下で一人でしゃがみこんでそこから動けなくなってしまった。不思議と涙が出ることはなくそれが唯一の救いだった。


「それより、カブト。そこにいる女は生きているの?」


「さぁ?」


少しだけ上を見上げると眼鏡の青年が私の前に立っていて思い切り睨んだ。その見下す目がムカついて私は2本の足で立ち上がりほぼ青年と視線を一直線にした。


「出口はあっちですよ。」


その後ろには彼をまとった大蛇丸がいた。


「人殺し。」


「残念だけど僕は殺していないし彼は間接的に生きているよ。それに返すと言う約束もしていない。あんただって知ってるはずだ。ならこれはこの世界の必然だ。」


。」


彼の声がした。どこから?気持ちが悪い。彼の声が私を呼んでいる。こっちに来いと手招きしている。大蛇丸が一歩進むたび、後ろに後ずさりする。触れ合うことは同時に死だ。


「私の最愛の人の体はどう?本当に悪い夢でも見てるみたいよ。」


「ええ。とてもいいわ。でもどうせすぐにいらなくなる。」


彼(大蛇丸)は確実に歩み寄る。ああ、私は死ぬんだ。


で も ど っ ち の 世 界 に も 彼 は い な い じ ゃ な い 。
じ ゃ あ 、 私 は 彼 の い た 世 界 を 生 き よ う 。
彼 を 描 い て 忘 れ な い で 生 き て い け ば い い 。