接吻


夜のキスが嫌いだと言う。夜のキスがどれほどの価値を得るのか僕は知らない。長く長い口付けを君にあげよう。長い、長い、長い。上の唇にキスをした。少し目を開けると、手を握って目を閉じているがいた。こういうキスを僕はずっとしたい。僕もやっぱり夜のキスは嫌いだ。今はただ長く愛を確かめよう。

、怖いの?」

「別に。」

「そっか。」

が目を伏せたとき、日にちらりと当たったまつ毛が金色に見えて、どこかの国の可愛いお姫様みたいだと思った。まつ毛に触るとビクッと目を閉じたを見て、このまま永遠に大きくならなかったら良いのになぁなんて聞かれたら怒られるし、罰当たりなことを思った。

「何するの?先生!」

「ごめんね、でもゴミがついてたんだよ?」

「嘘つき。」

「どうして?」

もう一度キスをしようと顔を近づけるとの手が僕の口にあてられていた。

「だって先生は嘘つく時、相手の目を見ないのよ。いつもそう。」

薄く小さく上品に笑う。どうして君はいつも僕を困らせるんだろうね。困ってるんだよ。手はずっと僕の君にあてられたままだ。

「先生、大好きだからもう少しだけ待っててね。」

そんな事言われたら、待つしかないじゃないか。手をそっと離したの手を僕はできるだけそっと取り、王子様(と僕は離れすぎているけれど)の様にの手の甲にキスをした。お姫様を待たない童話はない。


(050716)