光も何もない森の中で私は真っ白なドレスを着てる。そこにターコイズ色した蝶が私の目の前で飛んでいる。触ると粉々になってパラパラ落ちて行った。現実逃避にも無理があると思う。縁起が悪い。早くどうにかして私を起こしてよ。

歩いていたら目の前にターコイズの蝶が飛んでいる。触っちゃいけない、でも触ってしまいたい。また砕けてしまう。これは現実なのにそう思った。

「大丈夫。」

「え?」

「この蝶は壊れたりしないから。」

男は私の手を取って蝶へと向けた。蝶に手がぶつかって反射的に手を引っ込めた。男の手を振り切って...

「ほら大丈夫。」

「誰?」

男の周りを蝶が飛ぶ。あなたは誰?どうして私の夢を知ってるの?こんなに現実から離れているのはどうして?まだ夢の中にいるの?

「俺に触ってみる?ほら。」

差し出された手を片手でゆっくり触った。長い指。もう片方の手で男の手に触った。触っちゃいけない気がするのはどうして?

「ほらな。でも夢の中で壊れたのは蝶じゃないんだ。」

男は私を一度だけ優しい目で見つめてそれから私にキスをした。ただ呆然としている私に男は「可愛いね」と言って私の髪をゆっくり撫でた。



「壊れたのは君のコア。」




(051207)