小さなときおじさんにイタズラされた。それを母親は知りながら何もしてくれなかった。それどころか私を憎悪の対象としてしか見なくなった。父親はいない。そんなあたしの目の前に現れたのが仙水 忍だった。私は中学1年の夏にもともとないような心を売った。心を売った代償は自由だった。

「可哀想に。随分辛かっただろう。」
「そんな言葉言われたいために話したんじゃない。」
「じゃあどういうつもりで言った?」

その人格が、「忍」だったのか「ミノル」だったのか別の人格だったのかは今もわからない。でもきっと「忍」だった。とあたしは信じていたい。

「おもしろいの?あなたのしようとすることは。」
「おもしろいよ。」
「ふーん。」

そのまま仙水さんは私を壁に叩きつけた。背中がミシミシ音を立てている。

「何すんのよ!!」

あの時に似てる。あの時のアレに似てる。あたしの顔が一瞬にして曇ったのを見て仙水さんは笑いながら言った。

「そいつを殺しに行こうか?」

あたしは仙水さんに抱きついた。嬉しかったのかもしれない。あたしは子供だった。ずっとずっとどこかで渇望していたものだった。

「殺してやりたい。」
「俺に協力するならいいよ。」
「約束する。」
「君は本当の自由を手に入れ、俺は目的を達成する。」

それからのあたしは学校に行かず仙水さんの側にいた。親はあたしがいてもいなくても干渉しない。仙水さんの側にただ居て寂しくなったら抱きついた。唯一あたしを甘えさせてくれた。眠くなったら寝たけどずっと側に仙水さんが居てくれてたまに添寝もしてくれて、布団もかけてくれた。誰からも一度も注がれた事のないモノをたくさんくれた。それが偽りって事はわかってたんだ。あたしが仙水さんの側に居られる時間は日に日に少なくなった。あたしだって足りなかった。会えば昔のようにはなれなくてやっぱりあの時と同じ事をされた。それが嫌だとは言えなくて何度も何度も一人で泣いた。きっと気づいてただろうけど。

「でも感謝してる。」
「本当に良い子だ。」
「良い子は人殺しなんかしない。」

あたしは裸のまま仙水さんに抱きついた。あたしの目の前にはなんて素敵でキレイな世界!



「あたしのすべてをお好きにどうぞ。」













Beautiful!



(070509)