01.red flower
赤い花を半年間添えるといいことがある。それは、成績も望みも希望もすべてが出来る。はたしてこの世にそんなものはあるのかまだ信じてもいなかった。これはある子供の話。
アカデミーにいた頃の話だ。ある朝、花瓶に真っ赤な花が1本添えてあった。(あとでみると血か火のように見えた。)そうしてそっと近づくと「呪われるぞ」と声がかかってやめた。他人事のようには思えなくなっていた。翌朝、また同じ光景が目に入ってきた。
「なぁ・・・コレやばいんじゃね?」
「気味ワリー」
という声が耳から入ってきた。このときにはもう別の興味がわいていた。
「これ誰がしたの?」
「知らない。」
名前を知らないやつが話しかけてきた。(後で知った。)ただやっぱり花には興味はあったみたいだ。俺の顔を見て笑ったからイライラした。
「知ってた?」
「なにを?」
「赤い花を毎日1輪いけるといいことがあるんだって。」
「それがどうした。」
「誰 に も 見 ら れ な い よ う に ね 。」
あとでしったのはそいつはという名前ことだけだった。それからその行為は1週間続いた。休みが明けたらそこにそれはあり続いた。
いつかぼろが出るだろうと思って無視していたのだが犯人は賢かった。ただ、いつも変わらなく花を添えていた。たいしたもんだな。とそのとき思った。
02.Can you ask me?
だんだん日がたつほどに花の本数は増えた。このゲームに見せられたからだ。(その一人に自分がいることはまだ俺は気づいていない。)だか誰も途中で見つかっていた。生き残りはただ創造者ただ一人だった。
「誰だと思う?」
「案外ドジな子かもしれないね。」
「ありえないだろ。」
「うちは君は誰だと思う?」
「頭のいいやつ。」
「だめね。こういうのは意外性が大事なの。」
ただ、この少女ではない気がしていた。それを信じるにはあまりに現実的過ぎた。数年後にはあの頃の話になっているんだろうなと思った。どこまでも不可解だった。
日が経つほどにわかってきたのは創作者は女であるということだ。花のセンスがそれを物語っていた。赤いチューリップから始まってカーネーション、バラ、彼岸花。毎日毎日別の花が添えてある。これだけ赤い花を買うやつがいればなにか花屋も不審がるだろうに。
「毎日花を添えるのなら教室にも飾って欲しいな。花係要らないじゃない。」
俺は犯人を捕まえたくなった。何か気持ちが湧き上がってきた。毎朝、ありえないほどの速さで登校してもそこに犯人も花も視界にいれることは出来なかった。遅くまで残ってみるもののやはり結果はイーブンだった。ある朝、一人の少女が花を添えていた。だけどそれは創造者でないことがわかった。この彼女が持っているのは、赤いバラ。昨日の花はバラ。2日続けて同じ花を添えることはありえない。しかも今日はもう少女以前に花が添えてあったこと。後ろから手が伸びた。急いで後ろを向いた。
「?」
「驚いた。何してるの?」
「・・・えっと。」
「わかった。犯人探しだ。」
気がつけば普通に朝の早い生徒の登校時間。
「やめたほうがいいんじゃない?」
「いいだろ。」
「うちは君の勝手だろうけど、この子はきっとシッポ出さないよ。」
「・・・。」
「そんな気がする。」
「気になんないのか?」
その答えがあまりに意外で情けなくなった。少し回りより大人びていた彼女にはどうでもいいことだったんだろうか。だけれど擦れた感じがしなくてそんなところがいいところだった。知的で、だけど周りの子と同じように生きてる女の子なんだと思った。「俺にはつりあわないんだ」そう思わざるをえなかった。同 い 年 の 子 は 笑 っ て る の に 出 来 な い 。幸 せ に な れ な い 。ジ レ ン マ お そ っ て く る 。泣 き た く な る 。神 様 が い る な ら 頼 り た く な る 。
03.What do you like color?
なんとなく彼女と彼は仲良くなった。もちろん一歩踏みとどまってしかいなかったけれど。ただ1つあわなかったのは犯人探しだった。つかまなくては。
「もう3ヶ月だよ。」
「ああ。」
そこに教師が通った。彼は花瓶の前に突っ立っている俺の横に来た。彼は偽善者と言うには可哀想な偽善者だと思う。
「赤い花か。」
「知ってるんですか?」
俺は教師に問いかけた。教師は俺と、斜め後ろにいるを見て笑った。
「これは先生が子供のころに流行ったやつだしな。」
ゆっくり静かに言った。(そうでもしないと自分を保ってられないほどだったから。)声が震えそうになる。喉が渇く。
「教えてください。」
教師が言うには、赤い花を毎日必ず誰にも見つからないように活ける。それを半年間通すと最後には願いがかなう。ただ、これは1人だけなので途中参加者は無意味である。このゲームが終了して次の人間は最後赤い花を生ける花瓶もらう。それが最低条件。次の切符がわたるのは少なくとも後3ヵ月後だということ。
「先生ぐらいの年代の大人はみんな知ってるよ、これで怪我したやつもいるし。」
「え・・・?」
横でぼうっと聞いていたが声を出した。
「女の子がな。"自分こそ"って花を取り合った結果」
ドクンドクンドクンと脈打つ音が聞こえる。横のまでもが興味を示している。自分の手を握ると気持ちの悪いヌルヌルした汗で余計な気持ちを抱いた。
「階段から落ちて全治半年の怪我をしたんだよ。早く帰れよ。」
そう笑いながら彼は廊下に消えて行った。手の汗はゆっくり乾いていった。もしも、手が濡れてなかったらの手を握るぐらいしてやれたと思う。がポツンと口を開いた。
「呪いみたい。これでもまだ犯人探しするの?」
「捕まえたいんだ。何が悲しくてこんなことしたのか」
彼女は俺の横から俺の前に来た。薄く笑った。(何もかも見透かすような母親のような目で俺を見た。)
「ねぇ、私に犯人教えてくれる?」
目の前が少し輝いて見えた。彼女はキラキラして見えた。ある日、花瓶から赤い花が折られて捨てられていた。犯人を捜そうと思ったが、該当はなし。誰もが「だれだ?やばい」と言う顔だった。花を折り捨てた少年は、手に3針縫う怪我をした。偶然が重なったんだろうと思った。そしてまたひとつわかったのがアカデミーの中にいること。それは生徒であること。だった。もしかしたら自分の身近にいるのかも知れない。そんなことすら思い始めた。表情が凍りついた。彼女のどこに引かれたか。きっと、折れた花をまたキレイに活けたことだった。いつかいつか絶対に捕まえてやると思った。恋なのかもしれないなと思った。
「花。」
「?」
「袖についてるぞ。」
「ああ、本当だ。私お花係だからさ。」
その花は真っ赤な花びらだった。今日の花は確かチューリップだった気がする。
04.Clash!!Clash!!
朝の一言二言の会話の後、離れてそれぞれの群れに混ざった。不思議なもので、彼女がキラキラして見えた。きっと彼女は理想なんだと思った。おかしいのは自分だ。あと残りは、10日ばかり。本当にいろんなことがあった。という友達ができた。目まぐるしくて今までにないものを覚えることができた。
犯人についての提案で朝と帰りは止めたほうがいいと言われた。が、俺はその忠告を受け止めなかった。疑っている奴がいる。実はを疑っている。袖についていた花だってそうだ。話しかけてきたときこのゲームにあいつは詳しかった。花係なら簡単に花を生けることができるだろう。でもわざわざ自分が犯人ですと言う泥棒はいないし、花だって何時だって俺の見てない時に生けた。かなりの確立で俺の目には映るようになっていた。それを根拠とすると絶対にちがう。そう思わざるを得なかった。それに一番最初に興味がないと言ったその顔は絶望だった。(都合のいいイイワケだと思ってるしわかっている。)もしもこれが本当なら彼女に全てをいうことができるだろうか。
「あと10日。次の子は誰だろうね。」
「案外終わるんじゃないか?」
「そんなことはないよ。」
いきなり彼女は真剣な顔でまじまじと話し始めた。
「わたしね、卒業するの。きっともう会うこともないよ。遠いところに行くの。」
俺は声が出なかった。喉にあるのだろう。スポンジのようなものがある。次々に言葉を吸い取っていく。喉の奥がいたい。そんなときでも頭の後ろの方で赤い花が俺を取り巻く。
「私ね、実は忍者ってなりたくなかったんだよね。」
「そうか。」
「私、親いなくってね。見つかったんだって。里親って言うのかなぁ。私を受け入れてくれる人。すごいよね、優しいね。だって血の繋がらない私なんかほしいって言うんだもん。」
俺は何の言葉も出すことができなかった。自分が一番不幸だと思っていたから。人と接することさえ否定し続けてその結果がこれなら悪くない。神様がいるからできた技だと思う。
「犯人、私がいなくなる前に教えてよ。」
「ああ。」
そういって一緒にはなれた。一日、一日と時間はすぎていくけれど花は毎日添えてある。明日になれば赤い花の誰かの願いが叶う9日目の帰りに垣間見た。こちらに気がつきその子は走り始めた。女の子で足が速くてキレイで。必死に追いかけた。手を伸ばして思いっきりつかんで引っ張って振り向かせたんだ。切れ目で。大人びた髪型で。追いつくのが必死なほど足速くて。目の前で笑っている。女の子。紅い花を狂喜(狂気)といけた。忠実に。最後まで見つからず。キレイに。何故こんなバカを最後に。だっていつだってコイツは横にいた。
「ようやく見つけてくれた。」
「・・・名は?」
怖くなった。
「・・・ 。」
すべてがこうして壊れた。
05.Lost time,you,me.
「なんでだよ」
「・・・。」
ゆっくりと。うつむいて。手をそっと引き剥がした。はいつものように口を開いた。目の奥で俺を見る彼女を無性に欲しいと思った。
胃が痛くなった。気持ちが悪い。
「生きる意味が欲しかった。知ってる?生きる意味探しの無謀さ。これとであった。少なくてもその瞬間は私は生きていた。」
いつもの彼女なのに。気持ち悪い。だまされていた。
「最低だよ。私。」
声が出ない。気持ちが悪い。
「あと・・・誰に預ける気だ?」
俺のこわばった声に反応してそいつは笑った。一番最初に会った時のように笑ったのにこれが最後だとわかってる俺は、怒ることすらできなかった。
「うちは君。」
「人選ミスだ。」
「私はもう終わった。君が造ればいい。」
「いらねぇよ!そんなん!!だまされてまで得たくなかった。」
「でもいつか探してほしい。私がしたように君は君で。」
何だって何時だってこいつはこんなに的中する言葉を使えるんだろう。俺はこいつにそんなにもたくさんのいろいろなことを話していたんだろうか。反射条件で彼女を抱きしめた。その反射条件に声が所々聞きづらくなった。俺の背中にそっと手がある。二人して涙声だった。
「犯人はお前。バカだ。お前。」
「もうどうでもいいよ。」
どこかで本当にきれいな声がした。自分の最も近いところで声がした。声なんて些細なものだと思ってきたのにその声は何もかもを持っていて、俺がその声を聞くことができるのはあと少しだとようやくわかった。
「私を探してくれて見つけてくれてうれしかった。本当にありがとう。」
声が出ない。
「赤い花の花瓶も私も誰かに探して欲しかったの。」
「犯人は教えたからな。」
時間が止まった。
「サスケ君、大好きよりもっと大好き。」
ああ。ごめんなさい。こんな俺で。惨めな考えかたしかできない。少しだけ夢がみたいんだ。心のそこから思ったことを言おう。あの感情を抱き続けた最後に。俺が心底欲しかったものは赤い花の花瓶でもなんでもない。もうすぐいなくなってしまう彼女だ。
「大好きだよ。。」
「私は明日いなくなるから。」
二人して抱きあって泣いた。惨めで醜くて。ここで終わりだ。
その日の朝、俺はに会いに行くと今までいたはずの部屋の中は何もなく、いたのはと旅行用のカバンだけだった。いつも、学校に来るような動きやすい格好じゃなかった。水色のワンピースを着ていた。赤とは対照的で俺は少しだけ笑った。どちらからともなく抱きしめた。
「忘れないで。忘れないから。」
「ああ。」
「大好き。もっと一緒にいたい。」
もう会えない。もう。そうして二人で学校へ行き手を繋いで紅い花を添えた。学校が始まる頃にはここに彼女はいない。何も無くなる。そうしていつかは忘れていく。(消えないようにと思うけど。)風が吹いた。
「遠いのか。」
「うん。ずっとずっとむこうの小さな国だから。」
「遠いな。」
「会いに来てよ。大きくなって誰?ってくらいになって。」
彼女を空虚な家へ送ると迎えに来た大人がいた。その大人は俺とをみてさみしい目で笑った。つないでいる手を離した。大人は"もう、行くよ。着くのが遅くなるから。"とに言った。
「!会いに行く!」
「うん。」
はその大人について行った。サヨナラはなく、後ろを振り向く事もしなかった。最後まで俺は負けていたと思う。彼女はこの里から永遠にいなくなるだろう。横にもどこにも。全てがいたい。寂しい。いなくならないでくれ。そんな願いの甲斐もなくいつもの様に学校は始まり終わる。紅い花が昨日の放課後、落ちたと言うのをあとで教師に聞いた。首が持っていかれるようにポトッと落ちたのだと教えてくれた。「誰かがいなくなるのは辛いことだよ。」とも言っていた。
後日、紅い花が添えてあった。ほほえましかったがそれ以上の興味はいらなかった。どうか今度こそ全ての願いが叶うように。これからは別の道を歩く。もう別の道を歩いている。
(050130)修正・加筆