あなたは、あたしのスターだった。あたしが落ち込むと何も言葉は無くても側にいてくれた。側に寄り添ってあたしが落ち着いた頃にふらっとどこかへ消えていった。どこから来たのかなんてあたしは知らない。あたしは待つ。突然姿を見なくなったのはいつだったか。
 あなたはきっと生きる。あなたは誰もが見る限り不十分だった。欠けていた。生傷は絶える事がなかった。あなたは歩く、あなたは食べる、あなたは眠る、あなたは生きる。ないものねだりはしない。そんな美しい生き方に憧れた。あたしは、やっぱりバカで欠けた戻らないものを何度も足そうとしてた。針と糸で布を繋ぎあわすことが出来るほど簡単じゃないのに。何度も、何度も。
 忙しさと毎日の所為であなたを忘れて二年だった。あなたは、どうしようもなく落ち込んで泣くあたしの前に現れるなり前よりも少し老いた目で私を見て一言だけ言葉を残した。それが最後のあなた。
 あなたは無償の愛をくれた。与えたいと思う愛は美しいけど、無から生まれた愛ほど美しい愛はこの世界に存在しない。
 あなたがあたしといた事は瞬間。星の輝きにも満たない。けどそこには確かな重量感と喪失感がある。明日への希望なんてなかったあの日に希望をくれた。あなたのくれた色彩をあたしは、永遠に忘れる事はできない。
 あなたはあたしのスターだった。



(060307)