「ねぇおじちゃん。」
「やめて・・・!逃げなさい!!」
「さぁ、目を閉じて。すぐ終わるさ。」
「いい子だ。そう、そのまま。そのまま。」
少女の母親が叫んだが時間はない。子供が、こっちを見ている。大きな目で、ああ・・・大きな目で、ああ・・・。でもこれは義務ではあるが雑用に近い仕事だ。少女を胸に押し付け鼻と耳をふさいだ。"いたいよ、おじちゃん。"と聞こえた。かまうものか。こんなものなどにかまっていられるか!!
パッチン
「ママは?」
「お母さんは、とても遠い国へ行った(逝った)んだ。」
「あなたもゆくの?」
「君も私もみながいつか行く(逝く)べき場所さ。」
「おじちゃん、ママにあいたい。どうしたらゆけるの?」
「そんなことは言わないでくれ。君がいなくなれば私はさみしいよ。」
何の話だこれは。何の言葉だこれは。何の意味を持つのだろう。何の結果をこれは生み出した?この女性は(と言ってももう灰もない。)ただ、少し国家に逆らっただけではないか。子供までいたじゃないか。(一ケタ前半と思われる)小さな体の大きな目を持つ女の子が。孤児院に行くのだろうか。父親はもう他界しているはずだ。その少女は服を掴んで離さない。自分の母親を殺された国家錬金術師の服を。感覚が鈍っていく。鋭く尖らせた刀だって脆くなるのは容易だ。人間を斬ってしまえば油でどんどん斬りやすさは落ちていく。
「君は、この世界を美しいと思うかい?君の目には何が見える?」
君の目に見えたのはわかっている。そう。真っ黒になるほどにこげた地面。そうして目の前に散らばる無数の彼女の荷物。少女の目に涙が浮かぶのは一時間後のことだった。
|