03.空虚
昨日の事はキレイに思いだせる。
机に座ってても昨日のことがどこか頭から離れない。
「おはよう。」
聞き覚えのある声がした。
昨日泣きそうな顔をしていたはずなのに笑っている。
「怒ってんじゃねぇの?」
そう言うと彼女は笑った。
笑ってキレイにこういった。
「ビックリした?私、人驚かすの好きなんだ。」
「・・・ビックリしたけど。」
気 ま ず い 。
「いいよ。許してあげる。」
どうしてそんなに笑っていられるんだろうか。そう思った。
あんなにひどいことを言ったのにどうして1日で許してくれるんだろう。
俺だったら殴ってやる。
何事も無かったかのように隣に座る彼女を見てほっとした。安心した。
安心したと思ったら色々なものが溢れそうになった。
「ごめん。」と小さな声で誤ると「うん。」と小さく聞こえた。
「お前心広いな。」
今更だけどなんとなくだけど、こいつの側にいる奴の気持ちがわかった。
一番都合がいいからだ。
何をしても怒らないし感情をあらわにしない。だから楽なんだ。
「お前さ、もっと怒ったほうがいいよ。」
「怒ってるよ。たくさん嫌なこともあるし。泣きたくなるし。」
「あ。何気に嫌味?」
「そうかもしれない。」
笑った。いろいろなことを話した。性格、血液型、好きな教科。
卒業までの一ヶ月間のなかで、この一週間は思ったよりも楽しかった。
が笑う。俺はいつでも必死だ。
が笑うすべを自分は持たないからいつだって探し当てるのに必死だ。
必死に探し当てたものに対して笑ってくれるとすっきりとする。
一週間が過ぎて皆の進路が決まって、また元の日常に戻ると話す機会なんかなくなった。
それこそ気がついたら自分は卒業していた。
次に見た時、彼女は男と一緒にいてそれこそもうどうにもならない時間を感じた。
いなくなったと聞いた時おそらく、いや絶対に俺は
心 の 中 の 浅 い 部 分 で も 深 い 部 分 で も 喜 ん で い た 。